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貴女は何故泣いているのですか? 表情だけ変えないで心で泣いている…。 貴女は優しいからそんな素振りを見せてはくれないから。 貴女は不器用だから上手く言葉に表せないですし。 でも皆気づいていますから、そんな貴女が大好きですから 皆が貴女を大切に想っています。 気づいてください。 貴女は独りじゃないです。 たくさんの想いが貴女を取り巻いています。 中には好意ではない想いもあるかもしれない… 想いが重圧になることもあるかもしれない… 私たちには見せたくはない貴女の想いもあるかもしれないです。 だけど気づいて 差し伸べたこの手に気づいてくださいです。 私には何もできないかもしれないけれど 貴女は胸が苦しくて泣き崩れる私をそっと抱きしめて想いを分かち合ってくれました。 だから私も貴女が重いと感じた物を一緒に背負ってあげたい。 あなたの手を曳いて少しずつ歩いていきたい。 貴女が辛いのなら私という1を足して幸せにしてあげたい。 どうか届いて 『翠星石から真紅へ』 「我ながらよくもまぁこんな乙女ちっくな文が書けたものですぅ…」 はぁ、と溜め息をついて夕闇に染まろうとしている窓の外を見た。 今この部屋は自分だけの空間となっている。各々が好きな時間を過ごしている時間であった。 だからこそ翠星石は一人、苦手な筆を便箋に走らせていた。 「やっぱり名前は消しておくです…。匿名としておけば真紅も意識しないはずですぅ」 消しゴムでゴシゴシとこする。うまい力加減で名前を書いていたところだけが綺麗 さっぱりと空白となった。ハッと何かを思い出した翠星石は手紙にそっと付け足す。 「――親愛なる薔薇乙女、真紅様へ」 「名探偵くんくんより」 納得がいったのか一人手紙を見つめうんうんと頷き、小さな手で手紙を器用にたたみ、 のりに内緒で買ってもらった封筒に入れる。封をくんくんのシールでしっかりすると 次はどこに置いて気づかせるかを思案し始めた。 「どこがいいですかね?鞄に隠しておくとすぐに気づいちゃうですから…」 「なんというかすぐにじゃなくちょっと間が欲しい感じですぅ」 部屋をキョロキョロ見回しながら真紅に気づいてもらえる箇所を探ってみる。 ヘタに目に付くところにおいて真紅以前に雛苺に発見されても困るし、 かといって複雑に隠して真紅に気づいてもらえなければ意味がない。 「はふぅ…どうしたらいいですか?」 小さな溜め息と共に虚空を見上げつぶやいた。返事は帰ってくるわけもなく 一人部屋をうろうろと歩き回る。その姿は傍目から見たらつい声を掛けたくなるような どこか抜けているような愛らしい小動物のようだった。 けれどやはり部屋には一人だけで誰もいない。 だから声を掛けるものなど近くいるわけもなかった。 ――ガチャ 不意に部屋のドアが開く。 翠星石はローザミスティカが飛び出してしまうかと思うくらい驚き本棚に後ろとびで突進した。 その衝撃で棚から本が数札落ちてくる。 「あれ?翠星石どうしたのー?」 ひょっこりと姿を現したのは雛苺だった。 お絵かきを終えてきたのかスケッチブックとクレヨンを手に驚いている翠星石をきょとんと見つめている。 「ななな、なぁ~んでもねーですぅ!そっ、そうです!本を読んでいたですよ!」 咄嗟に落ちてきた本を開き取り繕ってみせる。 背に隠していた手紙も本に忍ばせるようにして隠した。 「うゆ…翠星石、本が逆さまなの…」 「!?こ、これはですね!最近の流行なのですよ!雛苺ったらおくれてるですぅ~ホホホ」 雛苺相手だからこんな手も通用するのだろう。真紅が相手だったら「それは私が大事に読んでいる 本よ。返しなさい」と捲くし立てられ手紙も見つかってしまうのであろう。 「さっ、さぁておなかがすいたですぅ!雛苺、今日の夕食はなんですか?」 「今日はね、花まるハンバーグなのよ!」 真紅の本棚に手紙を挟んだ本を含め落ちた本も綺麗に並べた。ついでに雛苺お絵かきセットも片付けると 背中を押すように1階へと降りていった。 (…まずいことになったですぅ。後でこっそり手紙を回収せねばですぅ) 本に挟んでしまった手紙に後ろ髪を引かれる思いで食卓へと向かった。 やはり、咄嗟にあんなところに手紙を隠したのは失敗だったと翠星石は悔やんでいた。 今日は面白いテレビ番組があるわけではなく、かといってくんくんのビデオを見たりするわけでもなかった。 よって食後の今、真紅も雛苺も2階でくつろいでいた。雛苺は夕食前と変わらず、楽しそうに絵を描くことに興じ、 真紅は翠星石と食後の紅茶を楽しんでいた。当の翠星石は紅茶の味を楽しむような余裕もあまりなく、 手紙のことばかりを頭の中でずっと気にしていた。 (このままですと…あっという間に手紙が見つかってしまうですぅ。読んでもらうのはいいですがもう少し猶予が…) 「――今日は良い月夜ね。少し欠けているのが残念だけど」 ふと真紅がつぶやいた。色々考えていたせいか途中からしか聞こえなかったが、 話の要所はどうやら耳に入っていたようだ。 窓の外に目をやると少し欠いた月が柔らかな光を闇夜に照らしている。 「欠けている割にはなかなかいい月明かりです。大したやつですぅ」 「ふあ…ヒナは先におやすみなのー…」 最初に脱落したのは予想通り雛苺だった。 「翠星石も休むですぅ…真紅も早く寝るですよ…」 これも計算のうち、先に鞄に入って様子を伺う気でいる翠星石も寝たふりをするため鞄に入っていった。 「二人ともおやすみなさい。私はもう少し起きているわ」 窓の外をとても穏やかで優しく見つめていた真紅が二人に声を掛ける。 心なしか声のトーンも優しく二人を包み込んであげるような包容力があった。 (真紅…) 声を掛けたくなる衝動に駆られたがここはグッとこらえる。 鞄が閉まるギリギリまで穏やかな真紅を見つめていた。 (とりあえず真紅が休むのを待つです。休んだところでこっそり手紙を抜き出して…) (手紙はどうするですか?……そうですぅ!ぽすとに出しにいけばいいのですぅ!!さすが翠星石です。さえてるですぅ) (それから…それから…しん…く…に手紙…が…Zzz) 「ん…もう朝ですかぁ?」 鞄を開けると窓の外から眩しい陽射しが指しているのが目に入った。 今日も天気は快晴で穏やかな一日になるに違いない。よたよたと鞄から出ると身体を一直線に伸ばした。 「うゆ…おはよう…ございます…なの」 「二人ともおはよう、今朝も良い朝なのだわ」 次いで雛苺、真紅という順で鞄から出てくる。 いつも通りの朝。目指すは1階の食卓である。 今朝もきっとのりがおいしい食事を用意してくれているであろう。 翠星石も一緒になって怪談を下ろうとするが、ふと大切なことを思い出した。 「あ、天気もいいですし窓開けておくですぅ!空気の入れ替えも大切ですから!先に下りていてくださいです」 などと理由を作って翠星石は部屋へ戻っていく。 真紅と雛苺はその姿をきょとんと見つめていた。 「あ、危ないところだったです。忘れるところでした。」 綺麗に整えられた棚の前に立って本を取り出す。 数冊あるのでどれに入れ置いたか分からないので手当たり次第だ。 「これでもないですぅ…こっちですか?…あっ、入っていましたですぅ!」 ホッと胸をなでおろし手紙を回収する。 出した本も綺麗にしまいなおして手紙を自分の鞄へと隠しておいた。 朝の食事が済んだ後、真紅と雛苺はリビングでくんくん探偵を、 翠星石は2階に上がって作戦を練ることにした。もちろん掃除をするなど理由をつけて リビングから逃げ出してきたのだ。幸い部屋にはジュンはいない。 図書館で勉強するために朝食後、外出していったからだ。 幸いにも条件が揃ったため翠星石は一人2階の部屋でベッドに腰を下ろした。 手紙を見つめどのタイミングで家を抜け出すか考えるがなかなかいい案が巡ってこない。 どうするべきかを考えてどうしたいのかを自分に問いただすがどうやらいい答えは出てこなさそうだ。 別に出かけることに理由はいらないのだがなんとなく理由を作って家を出たい気持ちなのだ。 「あ…そうですぅ。鞄に乗ってこのまま出れば問題ないですね。さすが翠星石ですぅ!」 ふと視線に入った鞄を見てつぶやく。応えは簡単なところにあった。 翠星石は自由気ままに鞄で移動ができるのだ。 「そうと決まればさっそくいくですぅ♪」 開いている窓からひゅんと飛び出し空を舞う。 穏やかな陽射しが体に染み渡っていく感覚がした。 自分の心がいつからこんな風に虚空を作り出すようになったのか。 こんなに天気の良い日でもふと思い出してしまうとこんな風に無表情になってしまう。 目の前からいなくなって寂しい思いをしているのは私だけではないはずなのに。 だから真紅に手紙を書こうって思っていたのに。 こういうときに限って頭の中では色々ごちゃごちゃとした疑問や想いが交差してしまうものだ。 弱い自分が嫌になる。だけどこれも自分なんだと納得をしたはずなのに。 何で悩んでいるかさえ分からなくなり、ふと手元の手紙に目をやると何か違和感を感た。 鞄を止めて封筒を凝視する。 「あれ…?シールが」 封をしていたくんくんのシールが明らかに変わっていた。 確かに自分で貼ったくんくんはいつものくんくんのシールだったのだけれど、 今、封筒に張られているくんくんはウインクをしているのだ。 そっと封を開けてみると便箋も翠星石がのりに買ってもらったものとは別物で そこには自分の字ではない優しく繊細な文字がしたためられていた。 名探偵様へ お手紙どうもありがとう。 とても優しいあなたの気持ちが伝わってきたわ。 私が心配事をしていること隠せていなかったようね。 そんなに分かり易かったかしら? こんなに優しい貴女に心配かけて私は私は悪い妹ね。 けれど私は……こんなにも幸せな貴女の妹… 気づかせてくれてありがとう。 大好きよ…翠星石。 だから貴女も悩みや辛いことがあったら きっと私や姉妹に言って頂戴。 すべてを癒してあげることなんてできないかもしれない。 でも半分くらい私たちが背負ってあげるから 雛苺も同じことをいっていたわ。 私たち、姉妹ですものね…お姉さま。 追伸、本はきちんと刊行順に並べて仕舞って頂戴。 便箋はニ枚あった。 一枚目は真紅によって書かれた短いけれどしっかりとした手紙。 もう一枚には雛苺が描いたであろう仲睦まじい姉妹の絵と、 「すいせいせき、あいとー!」 と絵に添えられていた。 ポタポタ落ちる温かい雫が止まらなくて翠星石は暫くそこにとどまっていた。 「ただいま~ですぅ」 少し目元に赤みを残したまま窓から元気よく翠星石が帰ってくる。 部屋にはくんくんを見終わった真紅と雛苺がくつろいでいた。 二人を発見した翠星石は目を逸らし冷静を装っている。 「あー翠星石おかえりなの」 「あら、お帰りなさい。お散歩かしら?」 顔だけこちら向けてにっこり笑う雛苺と本から目を逸らさず声を掛けてくる真紅に、 言葉を詰まらせてしまう。真紅は分かっているのよといわんばかりの態度で翠星石に目をやった。 「そそそ、そーですぅ。たまには外の景色を見るのも悪くないですぅ!」 視線に気づいているが素直になれないのも翠星石のいいところであり悪いところでもあったり。 やせ我慢する癖もあるからつい心配になってしまう性格である。 あえて真紅は何も言わず、翠星石を見守る行動に出る。 翠星石も成長しなければならない。いつまでも同じままではいられないと分かっている。 そっと雛苺を立たせ、真紅の隣へ座らせそのまま二人を優しく抱きしめた。 「真紅…ちびちび苺…」 「うゆ…?翠星石どうしたの?」 「あら、甘えん坊さんね」 二人の声が胸を刺激するので少し強めにぎゅっと抱きしめる。 愛しい思いが止められなくて二人の頬に軽くキスをしてあげた 抱きしめられることに苦しそうに、でも心地よさそうな雛苺。 真紅は抱きしめられる腕にそっと両手を添える。 「二人とも…ありがとうですぅ。翠星石はお前たちが大好きですよ。だからお姉ちゃんが絶対護ってやるですぅ」 「フフ…翠星石…お姉ちゃん。ありがとう」 「ヒナもヒナも!翠星石おねーちゃんありがとうなの!!」 部屋には爽やかな風が吹き込み螺旋を描き、気持ちを落ち着かせてくれる。もう悲しい想いはしない。 させないんだと心に誓いながら翠星石はこれからも愛しい妹を抱きしめ続ける。 おしまい
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翠星石「てめぇら目をつぶりやがれですぅ!この中でラプラス先生を飼育小屋に閉じ込めたやつはどいつですか!!」 翠星石「そこのAとかいうチビ人間、お前だけまだ家庭科の袋縫い終わってない ですぅ!どうするつもりですか。」 生徒A「やべえ。まだ全然終わってねえ。」 翠星石「しょうがないから放課後残るですぅ。翠星石が特別に手伝ってやるですぅ。」 生徒A「おおう。先生有難い。」 翠星石「勘違いするなですぅ。お前が出さなかったら私の評価が落ちるからですぅ。 自惚れるなです。」 翠星石「おまえら一時間毎に窓を開けて換気をするですぅ」 生徒「だって先生、この時期じゃあ寒くて窓なんて開けてらんないですよ」 翠星石「なに言ってるですか!そんなんだから風邪を引くやつがでてくるですぅ!」 ガラガラガラガラ・・・ ガラガラガラガラ・・・ピシャン 翠星石「き、今日はおまえらに免じて許してやるですぅ。そのかわり風邪を引いたら承知しないですぅ!」 ・・・ 蒼星石「姉さん、大丈夫?」 翠星石「蒼星石、例え寒くても換気は絶対にするですぅ・・・」 蒼星石「はぁ・・・」 生徒A「先生…これ見て」 翠星石「こ…こんなに大きくて、黒いの初めて見たですぅ」 生徒A「立派だろう?」 翠星石「凄く動いて可愛いですぅ」 水銀燈「あらぁ…二人して何を眺めてるのぉ?」 翠星石「コイツが持って来たデメキンですぅ♪」 翠星石「おまえらよく聞きやがれですぅ。近いうちに防災訓練があるですよ。サイレンが鳴っても慌てず、騒がず、落ち着いて・・・」 スピーカー「ヴィー!ヴィー!」 翠星石「ひぃぃぃ!!」 ガタッガタッガタッ 翠星石「おまえたちも早く頭の下に隠れて机を守るですぅ!!お、落ち着くですぅ!なんにも心配なんて無いですぅ!!」 スピーカー「これは避難訓練です。繰り返します、これは避難訓練です。」 翠星石「へ?」 スピーカー「只今、家庭科室で火災が発生しました、第2非常階段は使えません。生徒は先生の指示に・・・」 翠星石「い、今のは地震が来たことを想定した訓練ですぅ!おまえらも訓練だからって気を抜くなですぅ!とっととついて来やがれですぅ!!」 「あ、翠星石! ちょっとー!」 「なんですぅ?」 「帰りなんだけど、ちょっと遅れるから先に車に居てて」 「りょーかいです。早く来るですよ」 翠「何気に今日は投下多いですねぇ、こんなとこで遊んでねぇでちったぁ勉強しろですぅ」 「で、でもでも・・・ちょっとだけ嬉しい・・・かもですぅ」 「だからお情けでGJ!って言ってやってもかまわんですよ」 「翠星石…ま、まさか、今度の学食にそれを出そうというの…?」 真紅は半ば絶句しながら壇上にて干し肉を振り回す目の前のオッドアイ教師に尋ねた。 「そうですぅ!干し肉は栄養満点、おまけに食べるうちに歯も丈夫になる一石二鳥の究極のサバイバル食品! 干し肉を食べることで人類は己に迫ったどんな危機的な状況をも乗り越えてきたのです! 野生の味を忘れた現代人こそ干し肉を食することでハングリー精神を甦らせるのです! 人類は干し肉に感謝しつつ食事をとるべきなのですぅ!わかったかこのモヤシやろーどもですぅ! 翠星石は全校集会でそんな干し肉への熱い思いを綴った演説を延々一時間ぶちまけ、 感激した生徒諸君やローゼンはじめ万来の拍手で講堂は熱気に包まれる。 ローゼンの目には光るものが浮かんでいた。 口々にみな干し肉を称え、影から人類を支え続けた偉大なる食物の名を連呼する 「干し肉ゥ!干し肉ゥ!」 「干し肉ゥ!干し肉ゥ!」 もはやなんの集会なんだか。 真紅と蒼星石の頭痛は当面収まりそうにない。 291 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [自動保守、作動中。] 投稿日: 2006/08/07(月) 17 19 47.34 ID zj/Q1N1t0 翠「緊急事態ですかぁ? ……くっくっく、この翠星石様を落とそうなんざ、586920時間はえーです!」 297 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/07(月) 18 28 01.14 ID dmFTlG5S0 291 つまり、67年ってことだね。 299 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/07(月) 18 54 54.91 ID JBMa8vGqO 297 翠「よく考えるです。 一年は24×365で8760時間です。586920を8760で割ると確かに67です。 だが、世の中にはうるう年というものがあるです! 67を4で割ると16になるです!だからこの間には16~17回1日多い年があるです! このことから計算すると58920時間は66年と348日~349日です! 分かったですか?」 301 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/07(月) 19 02 51.55 ID JBMa8vGqO 翠(…正直、翠星石も最初は67年のつもりで言ってたのは内緒ですぅ…) 雛「あ、ま○まろ始まるのー。」 翠「翠星石は見ないですぅ・・・。」 かーわいいなんてそんなことー言っちゃだめですぅ 雛「・・・」 図書室にて。 翠「……ここにもない、ここにもないっ……ええいっ、これは一体どういうことですぅ?」 真「全く騒々しい……一体何の本を捜しているのだわ、翠星石?」 翠「ああ、真紅ぅ……それがおかしーんですよ。有栖学園の図書室といえば、ここいらでは指折りの蔵書量を誇っているはずなのに、中等部はおろか、初等部へ行っても、お目当ての本が見つからねーんですよっ」 真「へえ……それは珍しいわね。……で、一体どんな本を捜しているの?」 翠「ええと、それはそのぅ……………………因幡の白兎ですぅ」 真紅は、がっくりと頭を垂れた。 真「念のために訊くけど、あなた……その本をどうするつもりなのかしら?」 翠「ええっ? そ、それはもちろん、教頭の机の上に置いて、こっそり反応をうかがうため……って、真紅っ、どこへ行くですかぁ?」 真「……あの娘もあの娘なら……はぁ」 真紅はこめかみを押さえ、深いため息を吐いた。 彼女は、それを一刀両断した。 さらに彼女は、一刀両断したそれに更に止めを刺す様に切り刻む。 切り刻んだそれを、横によけると、また違うモノを取り出し今度は じわじわと削っていく。全てが削り終えれば六等分に斬る。 次に、木槌を取り出し、またまた別のモノを叩く。叩き叩き叩き続ける。 元の原型よりも肥大したそれを満足げに見た後、 業火にかけてあった鉄の板に、肥大したソレを乗せ焼く。 かすかな叫びを上げる肥大したソレは、時間がたつにつれしぼんでいった。 「で、数分して焼き加減を見て焼けてたらソレを皿に移すですぅ~ 先に刻んでおいたキャベツとリンゴを乗せればOKですぅ~ 調理実習にしては簡単すぎですけど、まぁ基本に戻るのはいいことですぅ と、言う訳で皆もボサッとしてねぇで、さっさと肉焼いちまえです」 調理実習「野菜の刻み方とリンゴの剥き方、あと肉の下ごしらえと焼き方」 最近、翠星石先生は僕にだけ厳しい。僕は家庭科は得意な方だ。ただ料理だけはまったくダメだ。ということで、調理実習の補習だ。しかも僕一人。ひどすぎる… 翠「まったく…ジュンは包丁すらまともに使えないのですかぁ?」 やはり厳しい。言われた通りにやってるつもりなのに… 翠「いいですか?こうやるんですぅ///」 後ろから抱きかかえるにして、包丁を持ってる僕の手の上から先生が手を握る。あぁ先生の香りいい匂いだね…なんて言えないな。 翠「さぁ、今度は自分でやってみやがれですぅ」 トントントン…痛っ!指を切ってしまったようだ。 翠「ちょっとジュン!何してるですか!?早く指貸すですぅ!」 …あのぉ先生?何で僕の指舐めてるんですか? 翠「このほふが、はやふなおふでふぅ/////」 この方が早く治るですぅって言われても… 翠「ぷはぁ!まったくジュンは…ほれ絆創膏。感謝するですぅ」 最初から出せばいいのに… 翠「う、うるせぇですぅ!さ、先生がジュンの代わりに作るから、おとなしく待っていやがれですぅ!/////」 何でそうなるのか分からないが、まぁこういうのもいっか!
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ある日の昼休み、 翠星石が校庭の木陰で弁当を食べていると2人の生徒がやってきた。 「翠星石先生、一緒に食べてもいいですか?」 「お願いしま~す」 翠「しょうがねえ奴らですねぇ。いいですよ」 相変わらず口は悪いが、態度は柔らかなものだった。 生徒が座るところをすぐに作った。 「翠星石先生のお弁当おいしそうー。おかずもらってもいい?」 翠「じゃんじゃんもらうですぅ。翠星石は気にしねぇです」 「じゃあ遠慮なく。…んーやっぱりおいしい♪」 翠「当たり前ですぅ。この翠星石の料理がまずい訳ねーです」 そんな感じでご飯を食べていく。 食べ終わった頃、生徒の1人があることを翠星石に尋ねた。 「あそこにあるのって翠星石先生の自転車ですよね?」 駐輪場を指差してそういう生徒。 翠「そうですよ。それがどうかしたですか?」 「なんかずいぶんと年季が入ってるなぁーと思って。いつ買ったんですか?」 翠「ああ、あれは高校生の時にあいつに……」 はっとする翠星石。しかし、もう遅かった。 「あいつって誰ですか!?恋人ですか!?」 「思い出の品ってやつですか?」 2人の生徒はすっかり食いついてしまった。 翠「そ、そんなんじゃねーです。もう!話してやるから落ち着けです!」 生徒を静める翠星石。そして、話し出した。 翠「あいつのことをSとするです。あれは高校3年の春のことです……」 ・ ・ ・ 翠「はぁ~!?引っ越すぅ!?何言ってやがるですか突然!!」 S「いや、ホントなんだ。親の都合で…」 Sの突然の報告に驚きを隠せない翠星石。まさに蒼天の霹靂。 愕然としている翠星石を申し訳なさそうに見ながらSは続ける。 S「引っ越すのは1週間後。あの駅から朝一で電車で行くから…」 あの駅とは翠星石の家とSの家から比較的近い小高い丘の上にある駅だ。 2人はいつもその駅から一緒に遊びに行っていた。 あまりの急展開についていけない翠星石だったが、 かろうじて1つの提案をした。 翠「そ、その日の朝、翠星石が見送ってやるです… だから、家まで迎えにきやがれです…」 非常に弱々しく言う翠星石。その声にいつもの覇気はなかった。 Sは翠星石の気持ちを察し、ふふっと笑いながら返事をする。 S「わかったよ。じゃあその日、家の外で待ってて。迎えに行くから。 じゃあ、また明日」 そう言ってSは自分の自転車に乗って帰って行った。 翠星石はその姿をただ呆然と見るしかなかった。 それからの1週間、翠星石は何をしても気が入らなかった。 食事も喉を通らなかった。Sのことばかり考えていた。 翠「あいつが引っ越すなんて…まだ信じられねぇです…」 翠星石とSは小さい頃からの幼馴染で常に一緒にいた。 いなくなった時の事など考えてもみなかった。 そんな翠星石の思いとは裏腹にSは明るく過ごしていた。 翠「あいつは翠星石と離れても寂しくないんですかねぇ…」 ベッドの上でSとの写真を見ながら呟く翠星石。 そして時間は刻々と過ぎていき、ついにその日がやってきた。 翠「はぁ~昨日も一睡もできなかったですぅ…」 目を真っ赤にした翠星石が自分の家の前に立っている。 心なしか頬もやせこけている。 翠「でも、別れる時までしんみりするのは翠星石らしくねぇです。 あいつに心配かけないためにも明るくするです」 これがこの1週間で彼女が出した答えだ。 しばらく、すると向こうからSがやってきた。 翠「おせぇーですぅ!何分待たせやがるですか!」 いつもの調子でSに文句を言う翠星石。 Sは少し驚いた風だったが、すぐに笑顔になり S「ははっ、ゴメンよ。…じゃあ行こうか。後ろに乗って」 翠「わかったですぅ」 そう言われSの自転車の後ろに乗る翠星石。 2人を乗せた自転車は駅に向けて走り出した。 翠「この自転車大丈夫ですかぁ?何かキィキィいってるですが…」 S「大丈夫だよ。ボクの愛用なんだから」 翠「理由になってねぇです!」 そんな会話をしながら進んでいく。 翠「静かですねぇ」 S「まだこんな時間だからね」 まだ朝も早い。あたりは水を打ったように静まり返っている。 S「何か世界にボクとキミしかいないみたいだね」 翠「そうですねぇ…って何いってやがるですか突然!」 S「ははっ」 顔を真っ赤にしながらSを見る翠星石。Sの背中はとても大きく見えた。 そして、だんだんと駅に近づいていく。 2人を乗せた自転車は長い坂の前にさしかかっていた。 この坂を登りきった所にSが電車に乗る駅があるのだ。 坂道に入り立ちこぎをするS。2人乗りでこの坂道はさすがにきついだろう。 だんだんと頂上に近いてきた。Sの顔には汗が浮かんでいる。 翠「がんばるです!あとちょっとですよ!」 後ろから声をかける翠星石。その応援が効いたのかはわからないが Sは一気に加速して坂を登りきった。 そして目の前に開けた光景に2人は圧倒された。 翠「キレイですぅ…」 S「はぁ、はぁ…ホントだ…」 2人の目には美しい朝焼けが映っていた。 翠「神様と翠星石からおめーに餞別ですぅ」 S「ありがたくいただくよ」 そうしてSは駅の駐輪場に自転車を止め、ホームに向かう。 それについていく翠星石。電車を待つ間、ホームのベンチに座って話す翠星石とS。 翠「いろんなことがあったですねぇ」 S「そうだねぇ~…キミが窓ガラスを割った時、ボクが代わりに怒られたりとか、 修学旅行で迷子になったキミをボクが探しにいったとか、他にも~…」 翠「だぁ~!!人の恥ずかしい思い出ばかり思い出すんじゃねぇです!!」 S「ふふっ、しょうがないよ。事実なんだし」 翠「ぐっ…」 それを言われては反論できない。黙ってしまった翠星石を見てSはさらに笑う。 しかし、こうしている時間もあとわずか、電車の時間は刻一刻と迫っていた。 そして、ついに電車がやってきた。それを見て立ち上がるS。 その服の袖をつかむ翠星石。目からは涙があふれていた。 翠(ダメです…いつものように別れるって決めたです…絶対泣かないって… でも、涙が…涙が止まらんです…) その手をゆっくりとSがほどく。 翠「ひっ…こ、これで…ひっく…お別れなんで…いやですぅ…」 顔を涙と鼻水でグシャグシャにしながら翠星石は言う。 するとSは翠星石に背を向けてこう言った。 S「そ、そうだ…あの自転車をキミに…預けよう…」 そう言われSの方を見る翠星石。Sの肩は震えている。 S「でも…預けるだけだからね…必ず…必ず取りに来るから…いつの日か…必ず」 翠「…わがったですぅ…約束ずるですぅ…」 S「よし、約束だよ…」 そして電車に乗り込むS。すると、翠星石は駅から飛び出し駐輪場に向かった。 Sを乗せた電車がゆっくりと走り出す。それを見て翠星石も自転車で走り始めた。 下りになった坂道を思いっきり飛ばしていく翠星石。精一杯電車に並ぼうとするが ゆっくりと離されていく。そして、 翠「約束ですよー!!絶対いつの日か取りに来るですよー!! 取りに来なかったら許さんですー!!」 電車のSに見えるように大きく手を振る翠星石。 そしてSを乗せた電車はすっかり見えなくなった。 自分の家に帰る翠星石。街には活気がでてきた。しかし、 翠「世界に翠星石しかいないみてぇですぅ…」 と小さく呟いた。 翠「相変わらずキィキィうるさいですぅ。でも…これでいいです…」 翠星石が乗っている自転車にはSの温もりがあった・・・ 翠「…と、まぁこんな感じですぅ」 「きゃー何かロマンチックですねー」 「でも、まだ乗ってるってことはその人はまだ取りに来てないってことですか?」 生徒の問いにニヤニヤしながら答える翠星石。 翠「さぁー?それはどうですかねぇ?」 「えー!?教えてくださいよー」 キーンコーンカーンコーン ここで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。 翠「ほらっ!予鈴のチャイムですよ。さっさと授業に行くですぅ」 「ケチー!」 そう言って生徒を追い払う。弁当を片付けながら自転車を見る翠星石。 そして、微笑む。その笑みは一体何を表しているのか… FIN
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「おめぇ。そういや、進路どうするですか?」 「ん~先生の手料理を毎日食べたい」 「はぁ? おめぇそりゃどんな進路ですか?」 ■■のコメントに、呆れたように言う翠星石。 「え~? 先生って鈍感すかぁ?」 「おめぇは、なーにが言いたいですか? 全然わからんです」 「だから、結婚しましょって話です」 「おめぇ頭にウジでもわいたですか?」 まったく、人が真剣に聞いてるのに、と翠星石は呆れる。 そんな翠星石を見て■■は、苦笑する。 「ん~とりあえず、就職して先生と結婚したい」 「はぁ……就職ってのはわかったです。ですが、なぁんでおめぇと私が結婚せにゃあらんのですか」 「だから~進路希望♪」 この馬鹿。と、翠星石は思いため息をつく。さっさと、教室行けです。と言い■■を追い払う。 「まったく……結婚だなんて…………ぅう……やっぱり一人身はやばいですかねぇ?」 そんな呟きが、去り際の■■の耳に聞こえていたのを翠星石はしらない。
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おとといの大雨・洪水警報が嘘のように今日は実に晴れ晴れとした日だった。こんなピクニック日和に出かけないのは人生における最大のシミとなり、一生引きずってしまう羽目になるかもしれない。ちょっとばかり大げさだが。 しかし心のそこから湧き出してくる感情を抑えるほど俺は器用ではない。まず、この感情の高ぶりを蒼星石にぶつけるべく洗濯物を干しているはずの蒼星石の元へ行くことにした。 俺が庭へ出て、物干し台を眺めるも蒼星石の姿は・・・いた。蒼星石は台をつかって小さい体をフルに使い洗濯物を干していた。 俺は後ろから抜き足差し足忍び足の容量で近づいていく。そして蒼星石のすぐ後ろに立つと、俺は抱き上げるように蒼星石の両脇を持つ。 蒼星石の体は俺に重さを感じさせることなく、宙に浮かんでいく。はとが豆鉄砲を食らったように蒼星石はきょとんとした後、状況を少しずつ理解し、手足をじたばたさせた。 「まっ、マスター!?いきなり抱き上げられたらびっくりす――」 と蒼星石が慌て始めた頃だった。俺の腕が物干し竿にぶつかり、それが台から外れ俺の両腕を襲う。 蒼星石を抱えているため俺は握力を緩めるなんて愚考は犯さなかった。すべての物干し竿が俺の腕にダイブしたあと、俺の両手に抱えられている蒼星石は腰をひねってこちらを向き、愚かな俺に心配をかけてくれた。 「大丈夫?マスター?」 「なんとかな・・・。」 俺は衝撃を受けてぷるぷると震える腕を動かし、蒼星石を地面に戻した。 「ふー、危なかった・・・。もう少しでとんでもないやつらを敵に回すところだった・・・。」 蒼星石は誰だそれ、という面持ちでこちらを見ていた。 俺と蒼星石は手分けして洗濯物を干し、家の中へ戻った。そこで俺は今日というすばらしい日をどうやって消費するかを蒼星石に相談として持ちかけた。 「どこに行きたいって?・・・愚問だね、マスター」 「なにっ!?」 「それはマスターが僕のマスターとして当ててもらいたいな。」 蒼星石は少しだけいやらしい表情で俺に答えを求めた。それこそ愚問だぜ、蒼星石。 「レバー肉専門店か?もしくはそれに順ずる焼肉専門店とか。」 「ふーん、マスターには僕はそう見えてたんだ?」 その反応に俺はしまった、と心の中で舌打ちする。まさか違うとは思いもしなかった。ギャルゲとかなら好感度-1ってところだ。 「僕はお花屋さんに行ってみたいな、マスター?」 「花屋か・・・近いところにいい店があるぞ。じゃあ準備でもしてくるか。」 俺はそういうと財布に札を数枚仕込み、準備をはじめた。 家を出発してすでに5分が経った。見晴らしのいい丘からは目的地である花屋を容易に見つけることができた。俺はより歩を早く進め、まさにピクニック気分といえる蒼星石を先導していく。蒼星石と会話していると10kmでも苦なく歩けそうだ。 さらに7分後。俺たちは花屋に到着した。入り口の外からでも花のいい香りが鼻を刺激する・・・ダジャレではない。 店内に入ると芳香はより強いものとなって俺と蒼星石の鼻を刺激してくる。蒼星石はブランド物のバッグを見ている女性のように花を舐めるように眺め、吟味している。俺は本能的に食虫植物に目が行ってしまう。悲しき男のサガだと信じておこう。 蒼星石はというと、花ではなく、種が詰まった袋を俺に見せた。パッケージには真っ赤な薔薇の写真が印刷されていた。 声には出さないが蒼星石はこれを欲している。真紅の薔薇を咲かすこの種を。俺は目で答え、代金を払う。思っていたより値段は安かったので正直、ホッとした。買い物を終え、俺と蒼星石は花屋から出た。店員さんの声が俺の背中を押した。 「ありがとうマスター」 「ああ。こちらも意外と安く上がったんでよかったよ。」 蒼星石からお礼のお言葉をあずかる。俺にとっての至福の瞬間でもある。しかし、丘に差し掛かったところでこの雰囲気はぶち壊されることになる。 突如、ヴーン、と何かがうなりをあげてこちらに向かってくる。蒼星石とおそろいの鞄。飛行。この2語が俺の中で絡まり、1つの結論を導き出す。 「翠星石!?」 しかし時すでに遅し。その鞄は俺の額に思いっきりぶつかり、なぐり抜ける要領で空中に飛び出す。そしてまた俺の顔の前に戻ってきてから空中静止する。俺は額の激痛でめまいがする。蒼星石は俺が倒れないように後ろから支えている。 すると鞄がバカンと開き、中から暴走運転をしていた張本人が出てきた。彼女は翠星石と言って蒼星石の双子の姉だ。見た目は瓜二つだが性格が大いに異なる。彼女は俺と蒼星石が一緒にいるのを快く思わないらしい。 「ざまあ見ろです、ド低脳人間」 と翠星石はさきほど俺に鞄で体当たりしたときにぶつけたのか、額をさすりながら出てきた。 「そっちも同じ状態にあるぞ。」 「うっさいです!今日こそ息の根を止めてやるです」 と翠星石は物騒なことをさらりと言いのけ、如雨露を手に構えた。大ピンチだ。蒼星石に俺は視線をやる。 「がんばって!マスター!」 蒼星石は丘に配備されているベンチに腰掛けて俺に声援を送っていた。俺が助けを求めると、 「よく言うよね、“子供の喧嘩に親は出るな”って。だから僕はここで慎ましく応援させてもらうよ。」 そうか。単に姉妹喧嘩を繰り広げたくないように俺は見えるのだが。そうこうしている内に翠星石が襲い掛かってきた。 「お前には力を使うのももったいないです!脳挫傷で殺してやるです」 今あきらかに物騒なことを言った。しかしまだ余裕がある。俺は翠星石の仕掛けてきた如雨露での殴打攻撃を右にかわす。 するとその翠星石の像が雲が蒸発するように消えていく。 「残像ですぅ。」 「はっ、後ろっ!?」 俺の背後に出現した実像が如雨露で俺の頭を力いっぱい殴りぬけた。鈍い音がして俺は前に倒れこんだ。 「ええっ?本気?」 と、蒼星石が俺の元に駆け寄ってきた。まさかコントにでも見えたのか。蒼星石は俺のいきなりの転倒に慌てふためいている。 意識が揺らいでる俺に翠星石がにじり寄る。 「・・さ、そこをどくです蒼星石。そいつ殺せない。」 「嫌だ!マスターを傷つけるなら翠星石でも許さない」 数秒前とはうって変わってシリアスな雰囲気になってきた。そろそろ俺の意識をつなぐ糸が限界に達しかけていた頃、俺の口が勝手に1つの言葉を口にした。 「――体は(蒼星石に対する)萌えでできている」 「え、マスター・・・」 「な、なんなんですか?」 2人が大きな不安を胸に抱き始め、それが確信に変わり始めた頃、俺の言葉は終わりに近づいていた。 「―その体は、きっと(蒼星石に対する)萌えでできていた。」 すると突然、世界が白き閃光に覆われたかと思うと、数秒後に別の世界が現れた。萌え盛る炎が壁を築き、世界から隔離する。 後には荒野。無数の蒼星石のポスターが乱立した、ポスターの丘だけが広がっていた。 「固有結界・・・これがお前の能力ですか・・・人間!」 「驚くことはない。これは全てただの萌えポスターだ。 人を傷つける力はない無力の存在だ。」 俺は右手を丘に刺さった一枚のポスターに手を伸ばし、握り、そして一気に引き抜いた。 「だがな、ポスターが如雨露に負ける、なんて道理はない。お前が如雨露を振るうなら、その悉くを受け 無力に変えよう。」 俺は一歩踏み出した。目前には世界樹の枝を操るドール。 「いくぞツンデレ女王――水の貯蔵は十分か。」 「は――思い上がりやがったですね人間!」 奴は“門”を開け、如雨露を召喚する。 荒野を駆ける。一対である二つの群は、ここに、最後の激突を開始した。 ―何分経っただろうか。俺と翠星石は以前と己の武器を打ち合っている。その力の差は互角、といってところだ。 しかし俺の魔力の消費が激しい。このまま持久戦が長引くとまずいことになる。そう思った俺いったん距離をとり、 丘からポスターを4,5本抜き出す。それを翠星石に向かって投げつけた。翠星石は一本目をかわすが、2本目の追撃により右腕を封じられて、左腕、右足、左足、と次々と四肢をポスターに封じられていった。 俺は翠星石に近づき、とどめを刺そうとした瞬間、俺の目の前にひとつの光球―人工精霊だ。目を守ろうとしたときにはすでに遅く、目くらましを食らったあとだった。 俺は目が見えずに2,3歩後ずさりをする。俺の力が弱まったため、ポスターが灰となって粉砕される。自由になった翠星石は俺に如雨露を構えた。 「これで終わりです人間。おまえにしてはよくできた方です。 冥土の土産に翠星石の宝具を飲み込んでくたばるがいいですぅ」 別にそんなものは飲み込みたくないが、そんな俺の気持ちもむなしく、翠星石は宝具を展開させた。 「スイドリーム(湿濡らす甘露の如雨露)!」 俺の意識が四方に拡散するのを感じた俺は、蒼星石に最後の言葉を託そうとした。 「蒼星石、頼む。奴を止めてくれ。このままだと世界は混沌の渦に飲み込まれてしまう。」 「わかったよマスター・・・。でも、別にあれを倒してしまってもかまわないんだね?」 「ちょ、蒼星石、何を言ってるですか!?」 「翠星石。僕らはもはやマスターを違えた。ローザミスティカを奪い合う敵同士だ。」 その言葉を全て聞く前に俺の意識は宙へと飛んでいった。 俺は不意に目を覚ました。俺は布団で寝ていたようだ。あたりを見回すと、自分の部屋だという確信は得られた。 時計を手にとり眺めると針は9時を指している。カーテンが閉められ、そこから闇が部屋を侵食していることを考えると今は夜らしい。 倦怠感が体に重くのしかかるが、それを跳ね除けて俺は居間へ行くことにした。 居間には蒼星石がテレビを見ながら湯飲みに注がれたお茶を飲んでいた。蒼星石は俺に気づくと 「目がさめたんだねマスター」 と声をかけてくれた。俺は蒼星石に昼間、何があったか訊いてみた。 「何って、僕とお花屋さんに行ったじゃないか。ほかに大したことは起きてないよ。」 そう振舞ってくれた蒼星石だがどこか裏があるような笑顔だった。それに、その言葉では俺が眠っていた理由を証明することはできないわけだが。 「えーっと、そうだ。帰ってきた途端、マスターが疲労で倒れたんだよ。きっとそうだよ。」 きっとそうだよ、って・・・。しかし俺は貧血気味なのかフラフラするためその日は蒼星石のレバニラ炒め+αを食し、再び寝ることにした。 これは後日談だが、翌日、俺は翠星石が持っていた物と同じような如雨露を使って買ってきた薔薇を育てている蒼星石を見た。俺はそのことについて触れることはしなかった。
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19 : あおらー(東日本):2007/03/20(火) 03 03 06.57 ID E4gxaSfk0 兄「僕、翠星石やめる。」 女「え、なんで?」 兄「だって、僕もともと男だし。それが当たり前のことだろ?」 女「・・・なにかあったの?」 兄「べべべ、別に何にもないですぅっ!」 女「もう翠星石口調に戻ってるよ」 兄「うるさいで・・・うるさいよっ!とにかく僕はこれで学校行くからな。」 女友「おはよー。あれ、今日は兄制服なの?」 兄「別に僕がどんな服着ようといいだろ?」 女友「あらら、ご機嫌ななめね。なにかあったの?」 女「それが、急に翠星石やめるって言い出して・・・」 女友「それは…バカどもが黙っちゃいないわね。」 兄「僕はもともと嫌だったんだ。普通に戻っただけだよ。」 女「あ、男くんっ!」 兄「!」 20 : あおらー(東日本):2007/03/20(火) 03 03 26.68 ID E4gxaSfk0 男「・・・蒼星石のマスターになれたらいいのに」 女「おはよう、男くん」 兄「お、おはようです・・・」 男「・・・おはよう、女さんと翠星石の人」 兄「っ!僕がわかるですか・・・?」 男「・・・なにか問題でも?」 兄「ななな、なんでもないですぅっ!朝からお前のまぬけ面みて、脱力しただけですぅ!」 女「お兄ちゃん、急にどうしたの?」 兄「だ、だからなんでもないですよ?あ!忘れ物したから戻るです、先に行ってていいですよ!」 ダダダッ 女「・・・お兄ちゃん、どうしたんだろ?」 女友「たぶん翠星石のコス取りにいったんじゃない?」 女「へ?だって・・・」 女友「あの子だって不安になる時があるのよ。本当の自分がなんなのか不安になったんでしょ。」 女「うーん、わかんないな。」 女友「特にあの子は、自分が男だってことを気にしてるからね。気付いてほしかったんでしょ、翠星石じゃなくても自分に。」 女友「意識してああ言ったかわかんないけどね、この男は…」 男「蒼星石のマスターになれたらいいのに・・・」